工場内に事務所を増設したいとの依頼を受け、現在プランの検討を進めています。一言でオフィスと言っても、どのような事業業態なのか、どのような人がオフィスを訪れるのか、パソコンの使用状況や書類のストックなど、100の仕事があれば、100のオフィスの形があるので、簡単にぱっと思いつく訳ではありません。それではどのように最適解を探っていくのか、その設計の流れをまとめてみました。
手書きでスケッチ検討する
既存スペースを寸法計測して起こした平面図の上に、トレーシングペーパーを重ね、手書きでスケッチを描いています。依頼者の要望を整理し、どのようなオフィス空間が必要なのかを考えながら、平面スケッチを描き進んでいきます。
描き起こしたスケッチをたたき台に、依頼者との対話を何度も重ね、どのようなオフィスを必要としているのかを探っていきます。依頼者の意図が比較的明確であれば、直ぐにプランが決定することもありますし、場合によっては、何案も提出することもあります。
スタディ模型を作製する
平面がまとまってきた時点で、検討を進めるためのスタディ模型を作成します。今回のプロジェクトは内装リフォーム工事ですので、模型の精度は1/50程度と大きめに作ります。よりイメージが具体的になるように、模型の内部にはテーブルや机、収納棚なども作り込んでいきます。
スタディ模型を作ることで、2次元の平面図からは読み取りにくい、高さ方向の情報が加わり、建築に詳しくない人でもイメージが容易になります。手を動かし、模型を作っていく段階で思いつくアイディアはその都度、模型に盛り込んで同時に平面を改善していきます。
スタディ模型が完成しました。平面図よりも、より感覚的にどのような事務所になるのかがイメージしやすいのではないでしょうか。建築工事は大きな予算を掛けて行うものですので、失敗は許されません。設計者がこれが良いと思って進めたとしても、その方向が依頼者の進む方向とズレていれば、その努力は無駄になってしまいます。そのようなズレが起こらないよう、図面や模型を作成して何度も依頼者と打合せを行うことが、私の事務所のスタンダードな設計の進め方です。
再びスタディに
スタディ模型を見ながら依頼者と打合せした内容を反映させ、更に良い案へと平面図を改善していきます。図面の上に再びトレーシングペーパーを重ね、修正案をペンで書き込んでいきます。何度も繰り返し、この作業を行うことで、より理想の案へと近づいていきます。