2020年初頭から世界中へ一気に感染が広がった「covid-19」ウィルス。人との接触を避ける事で感染拡大を防ぐという対策のため、オフィスへ出勤せず、家で仕事をすることになった人も多いだろう。私の周りでは、オフィスでなくホームワークするのは、とても困難だ、という話をちらほらと耳にする。事務所を設立してから今まで、通勤無し、目が覚めたら直ぐに業務開始というような職住一体、かつ、移動先や移動中にモバイルワークをやってきた自分にとっては、世の中がリモートワークへと移行していく事は歓迎だ。
これまでの日本国内での仕事の進め方というのは、直接相手と対面し、相手の目を見て話しをし、交渉を行うという形が大半だったと思う。特に大きな企業であるほど、その傾向が強かったように感じる。私の事務所では、個人住宅が業務の大半を占めることもあり、クライアント(依頼者)は個人であることが多い。そういった傾向があるため、依頼者は当然、平日は仕事をしている事が多く、直接会う事はせず、クライアント(依頼者)とのコミュニケーションは、メールやクラウド上のデータのやり取り、時によってはスカイプ上でのミーティングがメインで、必要な時には週末や仕事終わりに、月に数回、直接会って話をする、というケースが多かった。特に依頼者が離れた所に住んでいる場合には、打合せのための移動に伴う時間的・金銭的コストはかなり大きく、そのロスを最小限に留めるために、直接会わずにコミュニケーションをとる方法を取らざるを得なかったという状況も背景にはある。
私が設計事務所を始めた2000年頃までは、まだ設計業界は、紙に定規を当ててシャープペンシルで線を引き、図面を手で描いていた。建材メーカーからカタログを取り寄せ、分厚いカタログのページをめくって必要な情報を探し出し、ページをコピーし、現場へ指示事項をファクスで送る、といった業務をしていた。それから20数年後の現在、手で図面を描くという事は完全に無くなった。(今見ることは無くなったが、以前は図面を描く製図板というモノが設計事務所には必須アイテムだった。)現在は、パソコンのモニタ上でソフトを使って図面を描き、メーカーの建材はインターネット上で探し、PDFでデータ出力、メールで送信という風に、設計業務の形は、大きく変化をした。(きっと設計業界だけでなく、他の業種でも同じように業務環境は大きな変革があったはず。今思い返せば、手で図面を描いていた、そんな時代もあったなあと懐かしく感じるが、実はそれほど昔ではないという事に驚きを感じる。)
ここに来て「covid-19」ウィルスの影響により、リモートワークが一気に社会に普及し、今までは特殊だと思われていたwebミーティングなども、大手企業間でも当たり前に行われるようになってきた。アーリーアダプターな小さな事務所でなく、大手企業が変革に乗り出したとなれば、設計業務の変化が一気に加速していくのは確実だろう。現時点で既に、クラウド上にデータをアップし、離れた場所にいる個々が、一つのデータを同時に編集作業を行い、web上でミーティングをする、という事までは実用レベルで実現している。AIシステムが更に発達し、キーボードに入力しなくとも言葉で話すだけでテキストが入力され、話した言葉は同時に他の言語にも翻訳され、自分の行動や作図業務もAIにより最適化され自動化していく、というのも数年で実現されていく事だろう。
そのようなAI自動化の時代にあって、AIにとって代わられない、設計者にしかできない業務とは何か。じっくりと、かつ、急いで考えていかなければいけない時期に来ていると思う。 (人というのは、起こったことを直ぐに忘れてしまうというの本能があるため、私自身のメモのために今の状況をブログに記録しておこうと思ったのがこの記事を書いた動機)