家の配置を考える際、通常であれば家を北側に配置し、南側に庭を設けるというのが一般的かと思います。こう配置することで、南側隣地からの引きが取れ、家の中に太陽の光を取り入れやすくなるという利点ああります。しかし新潟浦山のコートハウスでは、その一般的なルールに反して、庭を北側に配置しています。なぜでしょう。
家が建つ前に敷地を確認すると、南側隣地の住宅が敷地ぎりぎりまで建ち、しかも隣地の方が地盤レベルが高いために、敷地の大半が影で覆われていました。このような条件で、北側に建物を寄せて南庭を取れば、確かに室内へは光は差し込むでしょうが、その代わり、全く光の当たらない南庭が出来てしまいます。こちらの家にお住まいになる施主さんは、家を持つなら絶対に庭を作りたいというのが要望でした。いくら庭があるといっても、日の当たらない庭であれば作っても意味がありません。そこで今回は一般解を外れ、庭を北側に配置することにしました。
本来、草花や木というものは、太陽の向きを向けて葉を広げ、花を咲かせます。ということは、南に庭を設けた場合、室内からは樹々を裏側から見ることになってしまいます。逆に、北庭の場合、南側に配置した室内から樹々の正面が見えることになります。つまり本来、庭木を見る為の正しい配置は北側ということになります。古来からある寺社や町家の庭を見れば、確かに北庭配置が多いということに気がつきます。
少し暗い室内から陽の当たる庭の緑を見ると、窓枠によって庭の風景がフレーミングされ、庭の美しさがより一層引き立って見えます。古来からの続いてきた庭の配置には、ちゃんとした理由があるのです。ただ今回、北側の庭だけでは室内への採光に少し不足を感じましたので、南西側にももう一つ庭を配置しています。北の庭は庭を眺めるため、南西の庭は採光を取るため。庭の機能をきちんと使い分け、配置計画を行っています。北側には美しい庭の緑の見え、南側からは明るい日差しが室内に差し込む。南側に庭を設けるだけが常に正解という訳ではありません、その敷地の条件を考慮しつつ、自由な発想を持って考えることが大切です。