「中野のコートハウス」その名の通り、こちらは中央にコート(中庭)を設けた住宅です。敷地境界ぎりぎりまで隣家が迫る市街地においては、庭を外部に設けるのではなく、建物の内部に設け、プライベート化するという方法は有効な手段だと思います。採光を期待して折角、庭を設けたのに、お隣さんから室内が丸見えで、いつもカーテンを閉めているようでは全く意味がありません。外部からの視線を遮るように設けたプライベートなコート(中庭)であれば、人目の気にならない開放的な住空間を作り出すことができます。
今回の敷地は2方向に隣家が迫り、2方向で道路に面し、どの方向にも開放できない条件の敷地でした。以前もそこに家が建っていたのですが、家の周りに庭がありながら、いつもカーテンを閉めていて、暗い室内で過ごされていました。そこで、真ん中にコートを置き、そのコートを取り囲むようにぐるりと建物を配置する平面を採用しました。ただ、単純に真ん中にコートを置いただけでは、暗いコートになってしまいます。そこで、そのコートに光を落とすために様々な工夫を行なっています。中庭を通した光が室内に拡散し、一日を通して明るく室内を照らします。
人目を気にせず窓を開けられるというのが、コートハウスの一番の利点かと思いますが、もう一つの利点があります。それは窓の外、コートの向こうに自分の家が見えることです。つまり、全ての部屋がコートに面しているため、どの部屋からも他の部屋を見ることができるのです。ひとつ屋根の下、他の人の気配を適度に感じながら過ごすことが可能になります。ただ部屋に閉じこもって一人で過ごしたいという場合には、窓のカーテンを閉めれば良い訳です。キッチンで食事を作りながら窓の外を見れば、旦那さんが下階のアトリエで作業しているのが見えたり、というような。互いの気配を感じながら過ごす、昔ながらの暮らし方がコートハウスのもう一つの利点だと思います。