新潟浦山のコートハウス。加工を終えた欅カウンター材の確認を兼ねて、材木屋さんで家具の仕様を施主さんと打合せ。出来上がった廻りの壁の色や空間のバランスを考えながら、家具のスケッチを描き、イメージを膨らませていきます。最後、引き出し扉の面材をどうしようか、と話をしていると、すくっとお施主さんが立ち上がり一枚の板の前に歩いていき、立ち止まりました。そこに立て掛けてあったのは、黒柿の板。複雑に黒い杢模様の入った板は、多くの板の中でも特別周囲へ存在感を放っていました。施主さん曰く「先ほどから目に留まっていて、この木に呼ばれてしまった」と。まるで人が樹を選ぶのではなく、樹が人を選んだかのよう。早速、板を机の上に並べ、どのように板取りするか打合せ。一枚の板から取ったことが分かるよう杢目を通し、かつ、共木(同じ丸太から取れる板のこと)を使って、ブックマッチ(本を開いたように左右対称)にして仕上げる方針に。
この板を選んだ施主さんの選定眼とセンスに脱帽しました。このように建物に遊び心を取り入れることって最近少なくなりました。黒柿仕上げの家具。初めて使う材料だけに、どのように仕上がってくるか、とても楽しみです。