新潟で、中古住宅を買ってリノベーションしたい方。いま住んでいる古い家を、直したい方。どちらの相談でも、よく聞く話があります。

家が寒い。間取りが使いにくい。いつもいるリビングが暗い。そして、古い家の耐震性が不安だということ。

新潟の冬は、曇りや雨、雪の日が続きます。昼になってもなかなか暖かくならず、日差しも少ない。寒さも暗さも、冬のあいだは毎日のことです。(→ 新潟の冬は、なぜ寒いのか)

どれも、暮らしの中で感じていることです。けれど、それを直そうとすると、断熱や構造、建物の劣化といった、ふだんは見えない部分へとつながることが多くあります。

そんなとき私は、暮らしと建物を一緒に見ることから始めます。中古住宅の場合、それは物件を買う前からです。物件を選ぶところも、リノベーションの一部だと考えているからです。相談に来られる方の多くも、購入する前に来られます。

物件を探し始めてから、決まるまでに数か月。長い方では一年ほどかかります。そこから設計、工事を経て、引き渡しまでが更におよそ半年です。

このページでは、その流れに沿って、買う前から入居までのそれぞれの時期に、何を確かめ、何を決めていくのかをまとめました。詳しいことは、それぞれの記事に書いています。

いまお住まいの家を直したい方は、「何を残し、何を壊すかを決める」から読んでいただけると理解が進むと思います。

1. 買う前に確かめること

中古住宅を探していると、価格や築年数、広さ、間取りに目が行きます。どれも大切な判断材料です。けれど、買う前に確かめたいのは、それだけではありません。

まず、建物の状態です。大きく傷んでいないか、傾いていないか、雨漏りしていないか。それから、法的な条件と敷地の条件。今そこに建っている家でも、思うように直せるとは限りません。予算は、物件の価格だけでなく、購入にかかる費用や設計料、工事費、予備費までを合わせた総事業費で考えます。

そして、その家で思い描いている暮らしが実現できるかどうか。建物として問題がないことと、その人にとって良い家になることは、別の話です。

いつ建てられた建物なのかも、確かめておきたいことの一つです。いまの耐震基準ができる前か後かで、耐震の考え方も、使える補助金や税の軽減も変わります。中には、買う前や、工事を始める前に手続きが要るものもあります。

ただ、購入手続きが終わるまでは、基本的に建物の中を詳しく調べることはできません。内見ができる場合は、私も同行して、建物の状態を確かめます。その状態に応じて予備費の割合を調整し、築年数が分かれば、補強にかかる費用も見込んでおきます。分からないところは、分からないものとして予算や計画に織り込んでおく必要があります。

最終的に買うかどうかを決めるのは、住まい手ご自身です。私は、その判断に必要な材料を整理し、何ができそうか、何が難しそうかを一緒に考えます。

2. 何を残し、何を壊すかを決める

中古住宅を買った場合も、いまの家を直す場合も、リノベーションでは、そこにすでに建物があります。何を残し、何を壊すか。新築にはない、リノベーションならではの判断です。

残せるから残す。古いから壊す。そういうことではありません。その先で何をしたいのかによって、残すものと壊すものは変わってきます。

たとえば、床の状態が良ければ残し、その上に断熱をして新しい床をつくることがあります。一方で壁は、耐震補強と断熱をきちんと行うために、一度壊した方がよいこともあります。同じ家の中でも、場所によって答えは変わります。

残せば、解体や処分の費用を抑えられます。ただ、残したところは、中が見えないままです。どこまで確かめ、どこまで手を入れるのか。その線を引くことも、設計の一部だと考えています。

3. 耐震:限られた予算で、どこまで補強するか

古い家の耐震性が不安だという声は、よく聞きます。そのようなときは、まず不安を数字に置き換えることから始めます。耐震診断では、建物の強さを「評点」という数値で確かめます。いまの建物がどのくらいの強さなのか、補強でどこまで上げられるのかを、数字で見ながら考えていきます。

新潟のような雪の多い地域では、屋根に積もる雪の重さも含めて考える必要があります。

耐震性能は、高ければ高いほど良いというものではありません。耐震補強に費用をかけすぎれば、断熱や内装、設備に使える予算が減ってしまいます。どこまでの性能を目標にするのか、そのためにどんな補強をするのかを、予算と合わせて考えます。

補強は、壁を増やすことだけではありません。壁の位置や偏り、床の強さ、今ある筋交いをどう活かすか。それらを合わせて考えることで、評点の低い家でも、工事の範囲を抑えながら性能を上げられることがあります。

数字の意味を説明し、どこまで求めるかを、住まい手と一緒に決める。耐震補強は、完成すると壁の中に隠れて見えなくなります。だからこそ、なぜそこにお金をかけるのかを納得したうえで判断していただけるようにしています。

4. 断熱:新潟の冬を、どこまで暖かくできるか

家が寒い。相談の中でも、よく聞く悩みです。古い家では、断熱材が入っていなかったり、入っていても性能が低かったり、壁の中を冷たい空気が通り抜けていたりします。

見た目や使い勝手を新しくしても、寒さがそのままでは、気持ちよく暮らすことはできません。断熱は、仕上げに隠れて見えなくなる部分ですが、暮らしの心地よさを大きく左右します。

どこまで断熱するかも、住まい手と一緒に決めます。家全体を断熱できれば一番ですが、長く過ごす部屋や浴室・脱衣室など、範囲を絞って断熱する方法もあります。この先その家に何年住むのかを考えながら、予算とのバランスで選びます。

断熱材は、ただ入れるだけでは性能が出ません。隙間なく入れること。壁の中を空気が通り抜けないように、気流止めをすること。そうした細かな作業の積み重ねが、冬の暖かさにつながります。

5. 解体してから分かること、工事中に決めること

リノベーションでは、壁や天井、床を解体して初めて分かることがあります。柱や筋交いがどこに入っているのか。接合部がどんな状態なのか。土台や柱など、躯体がどれだけ劣化しているのか。前もってできる限り調べていても、すべてを見ることはできません。

ただ、解体後に分かることは、悪い知らせばかりではありません。実際の構造が見えたことで、より確実で、施工しやすい方法に組み直せることもあります。解体の後にもう一度設計を見直し、耐震の計算にも戻して確かめるのは、そのためです。

壁が開いている時間は限られています。現場は毎日進み、壁を塞いでしまえば、その中はもう見えません。だから、その場で判断できるように、ほかにどんな方法があるかという選択肢を、前もって用意しておきます。分からないことを、すべて無くすことはできません。分かったときに対応できるよう、設計しておくことが大切だと考えています。

変更によって費用が増える場合は、住まい手と相談して決めます。ただ、後からでは直せないことは、先に対処し、理由と費用の見込みをすぐにお伝えすることもあります。

6. 費用と期間、制度

リノベーションの費用は、仕上げをどうするかだけでなく、建物のどこまで手を入れるかで大きく変わります。内装を新しくするだけなのか。耐震や断熱まで手を入れるのか。屋根や外壁まで直すのか。

そのため、リノベーションの費用は、本来は坪単価で表しにくいものです。それでも目安がなければ、検討の手がかりがありません。そこで、これまでの実績をもとにした目安を、別のページで示しています。

物件の価格が安くても、直すところが多ければ、総事業費は大きくなります。だからこそ、何を新しくするかと同じくらい、何をそのまま使うかを考えます。限られた予算を、どこに配分するか。それも設計の一部です。

期間は、物件を探し始めてから決まるまでに数か月から一年ほど。そこから設計、工事を経て、引き渡しまでがおよそ半年です。

補助金や税の軽減は、使えればありがたいものです。けれど、手続きの時期や期限が、工事の進め方を縛ることもあります。使うかどうかも含めて、制度も設計の条件の一つとして並べ、住まい手と一緒に決めていきます。

7. 事例

ここまで書いてきた進め方で、実際に設計した中古住宅のリノベーションです。

信濃町の中古住宅 耐震・断熱リノベーション(新潟市中央区)

信濃町の中古住宅 耐震・断熱リノベーション LDK空間

築32年の木造2階建て。細かく仕切られていた昭和の間取りの壁を取り払い、キッチンからリビングまでがひと続きの、明るい空間になりました。構造計算に基づく耐震補強と、壁・天井・床の断熱改修を行い、障子戸や網代天井など、元の家の味わいも残しています。

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燕市水道町の中古住宅 耐震・断熱リノベーション(新潟県燕市)

燕市水道町の中古住宅 耐震・断熱リノベーション リビングダイニング

築47年の木造住宅。状態の良かった外壁や屋根、水回りの位置は変えず、内部の壁の構成だけを組み替えて、南側の光が奥のスペースまで届くようにしました。限られた予算を、耐震と断熱、暮らしの質に集めています。

→ 事例を見る

8. 相談の進め方

最初のご相談では、いきなり間取りや部屋数の話はしません。どんな暮らしをしたいのか。いまの家で何に困っているのか。まずはそこから伺います。物件を探している段階でも、すでに家をお持ちでも、始まりは同じです。

物件を探している段階なら、図面や書類で確かめることも、内見に同行して建物を見ることもできます。すでにお持ちの家なら、建てたときの図面や確認の書類、増築や改修の履歴が、建物を読み解く手がかりになります。ただ、そろっていなくても構いません。現地を見て初めて分かることも多いからです。

相談したからといって、設計を依頼しなければならないわけではありません。その家で、思い描いた暮らしが実現できそうか。それを一緒に確かめるところから始めます。