【第3回】中古住宅を買う前に、何を確認すれば良いですか?

中古住宅を探している本間さんご夫婦。気になる物件も少しずつ見つかってきました。ただ、不動産情報を見れば、価格や築年数、間取り、広さなどは分かりますが、それだけで購入を決めてしまってよいのか不安もあります。前回、築年数だけではなく、実際の建物の状態を見ることが大切だと聞いた本間さんご夫婦。今回は、購入を決める前に、どんなことを確認しておけばよいのかを金子さんに聞いてみることにしました。
まず、何を確認すればいいんですか?

健太(夫): 中古住宅を買う前って、実際にはどんなことを確認しておけばいいんでしょうか?
金子: まず最初に確認するのは、建物の状態です。大きく劣化していないか、建物に傾きがないか、雨漏りしていないか。そういったところを実際に見て確認します。
美咲(妻): 前回教えてもらった、基礎のひび割れや床の傾きなどですね。
金子: そうですね。ただ、購入前に確認しておきたいのは、建物の状態だけではありません。その建物に法的な問題がないかということも、とても重要です。
今住めている家でも、法的な問題があるんですか?
健太(夫): 今、普通に建っていて人が住んでいる家でも、法的な問題があることはあるんですか?
金子: あります。古い建物の場合、建てられた当時は法律に適合していても、その後に法律が改正され、現在の基準には合っていないことがあります。いわゆる「既存不適格」の建物ですね。
美咲(妻): 既存不適格だと、リノベーションできないんですか?
金子: 既存不適格だから、すぐに問題というわけではありません。ただ、どのような工事をするかによっては、現在の法律に適合させる必要が出てくる場合があります。
ですから、「今そこに建っているから、自由にリノベーションできる」とは限らないんです。購入してから希望していた工事ができないと分かると困りますから、購入前に確認しておく必要があります。
土地の条件も確認する必要がありますか?
美咲(妻): 建物そのものに問題がなくても、土地の条件で困ることもあるんですか?
金子: あります。
例えば、崖地に関する規制に掛かっていたり、前面道路の幅が狭かったりすると、将来建て替えができない場合があります。今の建物をそのままリノベーションして使うのであれば問題にならなくても、将来の選択肢が限られてしまうことがあります。
健太(夫): リノベーションすることだけでなく、その先のことも考えておく必要があるんですね。
金子: そうですね。それから、地域の指定によって工事費が変わることもあります。
例えば防火地域などでは、改修内容によって窓サッシを現在の法規に適合するものへ交換する必要が出ることがあります。そうなると、予定していなかった工事費が増える可能性があります。
中古住宅では、建物そのものだけでなく、その建物がどんな土地に、どんな法的条件の中で建っているのかも確認する必要があります。
予算は、物件価格だけを見ればいいんですか?
健太(夫): 建物や土地の条件に問題がなさそうなら、次は予算ですよね。不動産情報に出ている物件価格を基準に考えればいいんでしょうか?
金子: 物件価格だけでは足りません。
住宅を購入するときには、不動産会社へ支払う仲介手数料や、登記にかかる費用など、購入価格以外にもいろいろな費用が必要になります。それらも最初から予算に見込んでおく必要があります。
美咲(妻): その上にリノベーション工事費が必要になるんですね。
金子: そうです。さらに、建物の状態によって、耐震改修や断熱改修に必要な費用も変わります。
状態の良い建物なら比較的少ない工事で済むこともありますし、補修や性能向上に多くの費用が必要になる場合もあります。
美咲(妻): 中古住宅だと、工事を始めてから分かることもありそうですね。
金子: あります。壁や床を解体して初めて分かることもありますから、リノベーションの場合は予備費を見込んでおくことも大切です。
大事なのは、一つひとつの費用を見るのではなく、物件購入費、購入諸費用、設計料、リノベーション工事費、予備費などを合わせた「総事業費」で考えることです。
必要であれば、購入前の段階で、設計者側で総事業費を概算しながら検討することもできます。
健太(夫): 安い物件を見つければ、それで総予算が安くなるというわけではないんですね。
金子: そうですね。物件価格が安くても、補修や耐震・断熱改修、法規への対応に多くの費用が必要になれば、結果として総事業費は大きくなります。
逆に、物件価格が多少高くても、建物の状態が良ければ、全体として合理的になることもあります。
建物に問題がなければ、買っても大丈夫ですか?
美咲(妻): 建物の状態も大丈夫で、法律や予算にも問題がなければ、その物件は買っても大丈夫と考えていいんでしょうか?
金子: そこで、もう一つ大切なことがあります。その建物で、お二人が希望している暮らしを実現できるかどうかです。
建物そのものに問題がなくても、お二人が思い描いている暮らしと、既存の間取りや敷地、周辺環境が合っているとは限りません。
健太(夫): そこは、どうやって判断するんですか?
金子: まず、そこでどんな暮らしをしたいのかを聞きます。家族でどんなふうに過ごしたいのか。庭とどのようにつながりたいのか。将来、家族が増えたときにはどうしたいのか。
そうしたことを聞きながら、その建物がその暮らしに合わせられるかを考えます。
美咲(妻): 建物を調べるのと同時に、私たちの暮らしについても考えるんですね。
金子: そうですね。建物として問題がないことと、その人にとって良い家になることは、別の話です。
中古住宅を購入するときには、建物が安全に使えるか、法律上問題がないか、予算の中に収まるか。それと同時に、その家で思い描いている暮らしが実現できるかも見ていく必要があります。

中古住宅は、総合的に判断する
健太(夫): 中古住宅を買う前って、思っていた以上に確認することが多いんですね。
金子: そうですね。建物の状態だけでなく、法的な条件や敷地条件、総事業予算、それからお二人が思い描いている暮らしとの相性まで見ていきます。
どれか一つに問題があるから必ずダメ、というわけではありません。その問題を解決するために、どのくらい費用や手間がかかるのか。それでもその物件を選ぶ価値があるのか。そこまで含めて考えることが大切です。
美咲(妻): 物件価格や間取りだけを見て決めるものではないんですね。
金子: そうですね。
中古住宅を選ぶときには、「この建物は大丈夫か」だけではなく、「この物件を使って、自分たちの予算の中で、思い描いている暮らしを実現できるか」まで考えてみると良いと思います。

この記事のまとめ
- 購入前には、まず建物の劣化、傾き、雨漏りなど、現在の状態を確認する。
- 古い建物では、既存不適格など法的な条件についても確認が必要。
- 崖地規制や道路条件など、敷地の条件によって将来の建て替えなどに制約が生じることがある。
- 物件価格だけではなく、購入諸費用、設計料、工事費、予備費などを含めた総事業費で考える。
- 建物として問題がなくても、その家で思い描く暮らしが実現できるかは別に判断する必要がある。
- 中古住宅の購入は、建物・法規・予算・暮らしを総合的に見て判断することが大切。
(連載4回目に続きます)