【第4回】中古住宅のリノベーションには、どのくらい費用がかかりますか?

中古住宅を購入する前に、建物の状態や法的条件、敷地、予算、暮らしとの相性まで確認することが大切だと分かってきた本間さんご夫婦。次に気になってきたのは、実際のリノベーション費用です。
中古住宅の価格が新築より安くても、リノベーションに大きな費用がかかれば、家づくり全体の予算は変わってきます。そこで今回は、中古住宅のリノベーションにはどのくらいの費用がかかるのか、金子さんに聞いてみることにしました。
リノベーションって、坪いくらくらいなんですか?
健太(夫): 中古住宅の物件価格はだいたい分かるんですが、リノベーションにはどのくらいの費用がかかるんでしょうか。坪単価のような目安はありますか?
金子: あります。ただ、新築以上に金額の幅があります。リノベーションの場合は、仕上げの違いだけでなく、「建物のどこまで手を入れるか」によって工事費が大きく変わるからです。
美咲(妻): 例えば、どのくらい違うんですか?
金子: これまでの実績から大まかに考えると、内装を中心に手を入れるリノベーションで40万円/坪程度。内装を全面的に改修して、耐震補強や断熱改修まで行う場合で80万円/坪程度。さらに屋根や外壁など、外装まで手を入れる全面的なリノベーションになると、120万円/坪程度がひとつの目安です。
以下は、これまでの実績をもとに、当事務所で木造住宅をリノベーションする場合の建築工事費の大まかな目安を示したものです。建物の状態、規模、工事範囲、設備や仕上げの仕様などによって変動します。
| リノベーションの内容 | 建築工事費の目安 |
|---|---|
| 内装を中心としたリノベーション | 約40万円/坪 |
| 内装フルリノベーション+耐震補強+断熱改修 | 約80万円/坪 |
| 外装改修まで含めた全面的なリノベーション | 約120万円/坪 |
健太(夫): 40万円から120万円まであるんですね。同じリノベーションでも、かなり違いますね。
金子: そうですね。リノベーションの場合は、単純に仕上げのグレードが上がるから高くなるというより、どこまで解体して、どこまでつくり直すかで工事費が大きく変わります。
どうして、こんなに費用の差があるんですか?
美咲(妻): 内装だけの場合と、耐震や断熱まで直す場合では、何がそんなに違うんですか?
金子: 内装を中心としたリノベーションなら、床や壁、天井の仕上げを新しくしたり、キッチンや浴室などの設備を交換したりする工事が中心です。既存の下地や構造を大きく変えなければ、工事範囲を比較的限定できます。
健太(夫): 80万円/坪くらいになると?
金子: 耐震補強や断熱改修まで行う場合は、壁や床、天井を剥がして、その内側まで手を入れる必要があります。

構造材を補強したり、断熱材を新しく施工したり、窓を交換したりします。完成すると見えなくなる部分にも、かなり多くの工事が必要になります。
美咲(妻): 120万円/坪になると、さらに外側まで直すんですね。
金子: そうです。屋根や外壁、サッシなどまで改修すると、建物全体に手を入れることになります。足場も必要になりますし、工種も増えていきます。
ですから、リノベーションの工事費を考えるときは、「どんな仕上げにするか」だけでなく、「建物のどこまで手を入れるのか」を見ることが大切です。
坪単価だけ見ておけばいいんですか?
美咲(妻): では、例えば30坪の家を80万円/坪でリノベーションすると、工事費は2,400万円くらいと考えればいいんですね。
金子: 建築工事費の大まかな目安としては、そう考えてよいと思います。ただ、中古住宅を購入してリノベーションする場合は、工事費だけで予算を考えない方がいいですね。
健太(夫): 他にはどんな費用がありますか?
金子: まず中古住宅そのものの購入費があります。それに購入時の諸費用、設計料や申請費用なども必要です。さらに、建物の状態によっては、工事を始めてから追加で必要になる費用もあります。
美咲(妻): 物件価格と工事費を足すだけではないんですね。
金子: そうですね。中古住宅の場合は、最終的には「総事業費」で考えた方が分かりやすいと思います。

健太(夫): そうすると、安い中古住宅を買えば得、というわけでもないんですね。
金子: そうなんです。購入価格が安くても、耐震、断熱、屋根、外壁、設備まで大きく直さなければならない場合は、総事業費が大きくなります。
反対に、購入価格は少し高くても、建物の状態が良く、そのまま使える部分が多ければ、結果として総事業費を抑えられることもあります。
工事を始めてから費用が増えることもありますか?
健太(夫): リノベーションは、工事を始めてから追加費用が出ることもあると聞きます。予備費は見ておいた方がいいんですか?
金子: 工事内容によります。既存の内装を大きく剥がさず、表面を中心に改修するのであれば、それほど大きな予備費を見なくてもよい場合があります。
一方で、床や壁、天井の下地まで剥がして、柱や梁、土台などが見える状態にする場合は、工事を始めてから初めて分かることがあります。
美咲(妻): 例えば、どんなことですか?
金子: 柱や土台の腐朽、シロアリ被害、雨漏りの跡、構造材の傷みなどですね。事前調査である程度は予測できますが、壁や床の中まですべて確認することはできません。
健太(夫): その場合、どのくらい予備費を見ておけばいいですか?
金子: 建物の劣化状況や規模にもよりますが、構造材が見えるところまで解体するようなリノベーションであれば、工事費の5%程度をひとつの目安として考えておくと良いと思います。
ただし、必ず5%必要になるという意味ではありません。状態が良ければほとんど使わないこともありますし、劣化が大きければ、それ以上必要になることもあります。
総事業費を抑えるには、どう考えればいいんですか?
健太(夫): では、総事業費をできるだけ抑えるには、どう考えればいいんでしょうか?
金子: まず、状態の良い中古住宅を選ぶことが大切です。購入価格が安くても、構造や外装、設備まで大きく直さなければならない家だと、結果として総事業費が高くなることがあります。
美咲(妻): 物件価格だけで判断しないということですね。
金子: そうですね。そして、リノベーション工事費そのものを抑えるという意味では、「何を残すか」を考えることが大切です。既存の間取りや柱、梁、床、建具など、使えるものを全部新しくする必要はありません。残せるところを残せば、その分、工事量も少なくできます。

健太(夫): 家全体を同じように直す必要もないんですね。
金子: そうです。例えば家族が長く過ごすLDKにはしっかり手を入れて、個室や収納は既存を活かすという方法もあります。リノベーションでは、「何を新しくするか」と同じくらい、「何をそのまま使うか」が工事費に影響します。
耐震や断熱は、どこまでやればいいんですか?
美咲(妻): 既存のものを残すことで工事費を抑えられるのは分かりました。でも、耐震性や断熱性についてはどう考えればいいんでしょうか?
金子: 性能については少し違います。耐震性や断熱性は、「どのくらいの性能を目標にするのか」によって必要な工事内容が変わります。
例えば、耐震補強をどこまで行うのか。断熱を床・壁・天井まで行うのか、窓まで交換するのか。求める性能が高くなれば、工事範囲も広がっていきます。

健太(夫): そこは、早い段階で決めておいた方がいいんですね。
金子: そうですね。少なくとも、「どのくらいの性能を求めるのか」という方向性は早めに整理しておいた方が良いと思います。工事費にも大きく影響しますから。高い耐震性や断熱性を求め、基礎や外装まで全面的に手を入れるようになると、新築と比較した方が良いケースもあります。
耐震と断熱については、次の回からそれぞれ詳しくお話しします。
リノベーションの費用は、「どこまで手を入れるか」で変わる
健太(夫): リノベーションは「坪いくら」と聞けば簡単に分かると思っていましたが、それだけではないんですね。
金子: そうですね。坪単価は、最初の目安としてはとても便利です。ただ、リノベーションの場合は、建物の状態が一軒一軒違いますし、どこまで手を入れるかも違います。
内装だけを直すのか。
耐震や断熱まで手を入れるのか。
屋根や外壁まで改修するのか。
その違いが工事費に大きく表れます。
美咲(妻): まず物件の状態を見て、自分たちがどこまで直したいのかを考えることが必要なんですね。
金子: そうですね。そして総事業費を考えるなら、物件価格だけでなく、その家を自分たちの暮らしに合わせるために、どのくらいの工事が必要なのかまで考えることが大切だと思います。
この記事のまとめ
- リノベーション工事費は、仕上げの違いより「どこまで手を入れるか」で大きく変わる
- 当事務所の実績では、内装中心で約40万円/坪、耐震・断熱を含む全面的な内装改修で約80万円/坪、外装まで含むと約120万円/坪がひとつの目安
- 中古住宅は、物件価格だけでなく工事費・設計料・諸費用・予備費を含めた「総事業費」で考える
- 構造が見えるところまで解体する場合は、建物の状態に応じて予備費も考えておく
- 総事業費を抑えるには状態の良い物件を選び、工事費を抑えるには既存の何を残せるかを考える
- 耐震性や断熱性については、どこまで性能を求めるかを早い段階で整理する
(連載第5回に続きます)