【第6回】古い家でも、暖かい家にできますか?

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古い家でも、暖かい家にできますか?

中古住宅の耐震性能について考えてきた本間さんご夫婦。次に気になってきたのは、冬の寒さです。

古い住宅を見ていると、「冬は寒そう」「断熱材が入っているのだろうか」と心配になることがあります。築年数の古い住宅でも、断熱改修によって暖かく、快適な家にすることはできるのでしょうか。

今回は、古い住宅の断熱性能をどのように考え、どこまで性能を上げることができるのか、金子さんに聞いてみることにしました。

古い家でも、暖かい家にできますか?

美咲(妻): 中古住宅を見ていると、築40年くらいの家もありますよね。そういう古い家でも、リノベーションで暖かくできるんですか?

金子: できます。古い住宅でも、床や壁、天井などに断熱材をきちんと施工して、窓の性能も高めれば、断熱性能はかなり改善できます。

健太(夫): 古い家には、そもそも断熱材が入っていないこともあるんですか?

金子: あります。特に築40年を超えるような古い住宅では、断熱材がまったく入っていないことも珍しくありません。また、断熱材が入っていたとしても、現在と比べると性能が低かったり、施工精度が十分でなかったりして、断熱材として十分に機能していないこともあります。

既存の断熱材は、そのまま使えるんですか?

美咲(妻): 断熱材が入っていれば、それをそのまま使えばいいんでしょうか?

金子: 古い住宅の場合は、既存の断熱材にはあまり期待せず、新しく施工する断熱材で必要な性能を確保するように考えています。
断熱材は、入っていれば良いというものではありません。隙間があったり、ずれていたりすると、十分な性能を発揮できません。

築30年の中古住宅の断熱状況

健太(夫): では、比較的新しい中古住宅ならどうですか?

金子: 住宅の省エネ基準が整備されて以降の比較的新しい建物であれば、断熱材が入っていて、ある程度の性能が期待できる場合もあります。その場合は、既存の断熱材の状態を確認して、使えるものは活かしながら、不足する部分を補っていくこともできます。

断熱は、どこを直すんですか?

健太(夫): 断熱改修というと、壁に断熱材を入れるイメージがあります。壁だけ直せば暖かくなるんですか?

金子: 壁だけではありません。基本的には、床、壁、天井や屋根など、室内を囲んでいる部分を断熱材で包むように考えます。どこか一か所だけ断熱性能が低いところが残ると、そこから熱が逃げてしまいます。

断熱は家を包むように考える

美咲(妻): 窓も関係するんですか?

金子: 窓はとても大きく関係します。古い住宅では、アルミサッシに一枚ガラスという窓も多く、冬になると窓からかなり熱が逃げます。既存の窓を高性能な窓に交換したり、内窓を追加したりすることで、断熱性能を大きく改善できることがあります。

「気密」って、どうして必要なんですか?

美咲(妻): 断熱の話を調べていると、「気密」という言葉もよく出てきます。断熱材とは違うんですか?

金子: 違います。簡単に言えば、断熱は熱を通しにくくすることで、気密は建物の隙間をできるだけ少なくすることです。

健太(夫): 隙間をなくすと、何が変わるんですか?

金子: 大きく二つあります。
ひとつは、隙間から暖かい空気が逃げたり、冷たい外気が入ったりするのを減らすことです。
もうひとつは、断熱材の中に空気の流れをつくらないことです。断熱材の中で空気が動いてしまうと、本来持っている断熱性能を十分に発揮できなくなります。

美咲(妻): 断熱材を入れるだけではなく、その周りの隙間もきちんと処理する必要があるんですね。

金子: そうです。断熱と気密は、セットで考えることが大切です。

耐震補強と断熱改修は、一緒にした方がいいんですか?

健太(夫): 前回の耐震補強でも壁を壊していましたよね。断熱改修でも壁を壊すのであれば、一緒に工事した方がいいんでしょうか?

金子: できれば、同時に考えた方が合理的です。
耐震補強するために壁を解体して、筋かいや金物を入れる。その同じ壁に断熱材も施工できれば、解体と復旧の工事を一度で済ませることができます。

壁内に新たに断熱材を充填する

美咲(妻): 耐震と断熱を別々に工事すると、同じ壁を二度壊すようなことにもなるんですね。

金子: そうですね。ですからリノベーションでは、耐震補強する位置と断熱改修する範囲をできるだけ重ねながら、全体の工事計画を考えることがあります。
工事を合理的に進めることで、工事費を抑えることにもつながります。

どのくらいの断熱性能を目指せばいいんですか?

健太(夫): 断熱性能にも、耐震の評点のような目安はあるんですか?

金子: 断熱性能の場合は、「断熱等性能等級」という基準があります。リノベーションでも、できれば新築で最低限求められる断熱等級4程度は満たしたいと考えています。

美咲(妻): もっと高くすることもできるんですか?

金子: できます。できれば等級5、条件や予算が許せば等級6に近づけたいところです。
ただし、古い住宅では既存の構造や窓、基礎などの条件があります。性能を高くしようとすればするほど、工事範囲も広がっていきます。

健太(夫): ここでも、どこまで性能を求めるかを決めることが大切なんですね。

金子: そうですね。ただ、必ずしも家全体を同じ性能にする必要はありません。

家全体を断熱しなくてもいいんですか?

美咲(妻): 家全体を同じように断熱しなくてもいいんですか?

金子: 暮らし方によっては、断熱する範囲を決めて、その部分の性能を集中的に高める方法もあります。「ゾーン断熱」と呼ばれる考え方です。
例えば、二階建ての住宅でも、これから主に一階だけで生活するのであれば、使わない二階には大きく手を入れず、一階を中心に断熱改修する方法があります。

ゾーン断熱の考え方

健太(夫): 暖かくする範囲を小さくするんですね。

金子: そうです。断熱する面積を絞ることができれば、その分、一か所あたりの性能を高めることもできます。家族が普段過ごすLDKや寝室、水回りなどを、ひとつの暖かい範囲としてまとめる考え方もあります。

美咲(妻): 古い家だから、全部を新築と同じように直さなくてはいけないわけではないんですね。

金子: そうですね。どこで、どんな暮らしをするのかを考えて、その範囲をきちんと断熱するという方法もあります。

暖かい家にするには、「暮らす範囲」を考える

健太(夫): 古い家でも、ちゃんと考えて改修すれば暖かくできるんですね。

金子: できます。ただ、単に断熱材をたくさん入れればいいわけではありません。
床、壁、天井や屋根、窓を一体で考えて、さらに気密もきちんと確保する。その上で、家全体を断熱するのか、普段暮らす範囲に絞るのかを考えます。

美咲(妻): まず、自分たちが家のどこで過ごすのかを考えることも大切なんですね。

金子: そうですね。断熱性能の数字を上げることだけが目的ではありません。冬でも寒さを我慢せず、家の中で気持ちよく過ごせること。そのために、必要な性能と工事範囲を考えることが大切だと思います。

この記事のまとめ

  • 築年数の古い住宅でも、断熱改修によって暖かい家にすることはできる
  • 築40年を超えるような住宅では、既存の断熱材には大きく期待せず、新しい断熱材で性能を確保することを基本に考える
  • 断熱は壁だけでなく、床・壁・天井や屋根・窓を一体で考える
  • 気密は、隙間から逃げる熱を減らし、断熱材本来の性能を発揮させるために重要
  • 耐震補強する壁と断熱改修する壁を合わせることで、工事を合理化できる場合がある
  • 断熱等級4程度を一つの目標とし、できれば5〜6へ近づけることを検討する
  • 家全体ではなく、普段暮らす範囲を集中的に断熱する「ゾーン断熱」という方法もある

(連載第7回に続きます)

この記事の著者

金子勉
建築家 / 代表

金子 勉 Tsutomu Kaneko

美しい意匠設計に加え、高度な構造・設備設計までトータルで手掛ける建築家。無垢材などの自然素材を活かし、使い込むほどに味わいの増す空間と豊かさを実感できる暮らしを提案。新潟の風土に寄り添い、土地選びから建物診断、コンサルティングまで施主に伴走する家づくりを行う。