お米スタンドHACHI HACHI+(米販売店舗)

視線を持ち上げ風景だけを残す

地元のお米屋さんが手がける、お米のある暮らしを提案する販売店舗とカフェの計画です。

敷地に立ったとき、まず目に入ったのは道路の向こうに広がる水田と、その先に連なる越後の山並みでした。米を扱う店舗でありながら、この敷地の価値は建物の中ではなく、その先に広がる越後平野の風景にあると感じました。

道路を越えて、遠景へ

敷地の魅力は道路側にはなく、その先に広がる越後平野の風景にありました。一方で、客席から正面を見ると、最初に目に入るのは道路を行き交う車や標識などの近景です。視線はどうしても手前の情報に引き寄せられ、遠くの風景まで意識が届きません。

そこでこの建物では、客席スペースの床を約80cm持ち上げています。

高さを約80cm持ち上げることで、視線は自然と道路を越え、その先に広がる田園風景へと導かれます。建築によって風景をつくるのではなく、もともとそこにあった風景を見つけやすくすること。それがこの場所に求められた役割だと考えました。

季節とともに流れる時間

客席に腰かけると、大きなガラスの向こうに越後平野が静かに広がります。春は水田に空が映り、夏は青い稲が風に揺れ、秋は黄金色の穂が実り、冬は一面の雪景色へと移り変わります。建物は同じ姿のままですが、窓の外には季節ごとに異なる風景が現れます。

開口はすべて北向きに設けています。室内をやや暗く抑えることによって、窓の外の風景が最も強く立ち上がります。柱やサッシフレームの存在を極力消し、一枚の絵のような開口として扱っています。

内と外のあいだに

エントランス前には、深い庇のある縁側のような外部スペースがあります。店の中に入らなくても、そこにいられる場所。おにぎりを食べたり、ただ座って風を感じたり。用途を決めず、滞在の仕方が自然に立ち上がる余白として位置づけています。機能だけでは生まれない、ゆとりのある時間がここにはあります。

粗さと力強さのある土間

販売スペースは高さ4mの吹き抜けを持つ土間空間です。お米を扱う場として、整えすぎた空間より、作業や搬入にも応じられる粗さが必要だと判断しました。倉庫や作業場としての機能と、店舗としての居心地を両立させるためです。

モルタルの土間床、現しの柱と梁。一部には曲がりのある太鼓梁を用い、素材の荒々しさと時間の積層を空間に刻んでいます。

お米と風景を結びつける場

この店で扱われる米は、この地域の風土の中で育まれています。そのため店舗の中心には商品を並べることではなく、その背景にある風景と向き合う場所をつくりたいと考えました。

道路の向こうに広がる田園風景を眺めながら米を味わう。その体験そのものが、この地域の豊かさを伝える方法になると考えています。

お店に関する詳細は下記リンクよりご覧いただけます。
「お米スタンド88+」インスタグラム
google map→新潟県新潟市西蒲区漆山8743−6

規模と構造

用途 販売店舗・カフェスペース・事務所
住所 新潟市西蒲区漆山8743−6
敷地面積 829.92㎡(251.05坪)
建築面積 125.87㎡(38.07坪)
延床面積 112.62㎡(34.06坪)
構造 木造平屋建て
竣工 2024年4月竣工
建築費 3,000万円(消費税別)地盤改良費を除く
坪単価 88万/坪
設計料 270万(消費税別)

性能

耐震性能:耐震等級2 耐雪積雪量1.0m(許容応力度計算による)
断熱性能:平均熱貫流率Ua値=0.48W/㎡K(断熱等級5/heat20 G1水準)

仕上げ材

天井:ラワン合板張り
壁:自然素材クロス張り 一部 チャフウォール塗装
床:モルタル金ごて仕上げ+撥水ワックス塗布
外壁:杉縦板張り 押縁押え+木材保護塗料ウッドロングエコ塗布

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