東三条まもる眼科

仕上げ材の変化によって自然に人を誘導する

旧来の医療施設には、清潔で公正なイメージを色で表現したかったからか白く仕上げた診療所が多いという印象があります。しかし近年、その白さが逆に取りつきにくく「人を拒む」ようなイメージへ転化してしまったように感じます。

今の医療、とくに地域医療においては、患者さんに寄り添った診療所であることが必要とされてます。その様な診療所では、真っ白な緊張感のある空間よりも、アットホームで親しみある空間が適しているのではないかと考えました。真っ白で無機質な空間では、だたでさえ不安を抱えている患者さんが緊張してしまいます。家のリビングのような心地よい空間で、リラックスして診療を受けてほしい、そのような医院長の願いから、このような空間が生まれました。

最上の医療というものは、直接的な治療をしなくとも、(つまり、むやみにメスで切ったり、薬を投与したりするのではなく)患者さんの話を聞き、気持ちをリラックスしてもらうだけで、病を直すことだと思います。そのような間接的な医療への関わりにおいて、設計者には大きな役割があるのだと思います。

各室の壁仕上げは、全て異なります。仕上げられた素材によって、その部屋がどのような機能を持つ部屋か、特別な標識がなくとも分かるようにしました。例えば、暗室は艶消し黒のざっくりとした仕上げ、手術室は清潔感を感じる硬質なタイル貼り、コンタクトコーナーは水をイメージさせる瑞々しい青色のタイル貼り、診察室は柔らかで落ち着きを感じる木目調、というように。また、床の色も、受付から診察室に至るまで、次第に色が変わっていくように意図して選んでいます。奥へ奥へと進んでいることが、暗示的に患者さんに伝わるよう、デザインしています。

平面の構成は、目に障害を持つ患者さん(つまり視覚弱者)にも分かり易くしようと回遊性のある平面としました。建物の中央に診察室を置き、その廻りをぐるりと一周すると、受付→検査→診察→会計が終わるという回遊式動線となっています。そうすることで、患者さん同士の動線が交錯せず、スムーズに診察を受けられます。私自身、他の病院で診察の流れが把握できず、どの診察室に入ってよいか、迷ってしまうことが多かったので、だれにも説明されなくとも、自然と分かる空間の流れを作りたいと考えました。

規模と構造

用途 診療所(眼科)
住所 新潟県三条市東三条
敷地面積 1550.37㎡(468.98坪)
建築面積 358.22㎡(108.36坪)
延床面積 472.52㎡(142.93坪)
構造 木造2階建て
竣工 2012年4月

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