燕市水道町の中古住宅 耐震・断熱リノベーション
古い家を読み、必要な場所だけを変える
規模と構造
| 用途 | 住宅 |
|---|---|
| 住所 | 新潟県燕市 |
| 敷地面積 | 320.46㎡(96.93坪) |
| 延床面積 | 113.03㎡(34.19坪)リノベ部分床面積 |
| 構造 | 木造2階建て |
| 竣工 | 2026年5月竣工 |
| 建築費 | 1,250万円(消費税別) |
| 坪単価 | 36.5万/坪(耐震・断熱内装リノベーション工事費) |
| 設計料 | 130万(消費税別) |
性能
耐震診断(詳細法)構造評点:補強前0.43→補強後1.0(積雪量1.2m)
断熱性能(外皮平均熱貫流率Ua):改修前2.52→改修後0.82W/㎡K(断熱等級4)
仕上げ材
天井:桐合板張り
壁:自然塗料塗り、ビニルクロス張り
床:オーク無垢フローリング+自然オイル塗布
外壁:既存のまま
屋根:既存瓦屋根葺きのまま
キッチンカウンター:I型オーダーメイドキッチン
浴室:ユニットバス
中古住宅のリノベーションは、古いものを新しくする作業ではありません。既存の建物を読み取り、残すべきものと更新すべきものを整理する。燕市水道町のこの住宅では、最小限の操作で空間と暮らしを大きく改善することを目指しました。
最初に感じた可能性
最初にこの建物を見たとき、率直に状態がいい、と感じました。築年数の割に漏水跡が少なく、柱の傾きも目立たない。南側に窓が多く、室内に光を引き込むことができる。1階の床面積が広く、ほぼ平屋のような暮らしができる構成でした。
古い家を診るとき、傷みだけを探していてはいけません。どこに可能性があるかを読む。それがリノベーションの出発点になります。
何が課題だったか
間取りは、1970年代の住宅によく見られる構成でした。細かく仕切られた部屋が連なり、DKは奥まった暗い場所にある。南側の窓から入る光は、廊下と壁に遮られて居室まで届きません。
建設年から断熱材はほとんど入っていないことが予想されました。冬は寒く、夏は暑い。温熱環境が安定しない家は、毎年の光熱費だけでなく、体への負担も静かに積み重なります。
耐震面では別の問題がありました。南側の大きな開口部は採光という点では魅力でしたが、壁量が不足しやすく構造的には弱点になっていました。明るさと耐震性が、設計上のトレードオフになっていました。
何を変え、何を変えなかったか
リノベーションは変えることが仕事だ、という思い込みがあります。しかしこの物件では、変えないことを先に決めたことで、本当に必要な改善に集中できました。
外壁・屋根・水回りの位置は、今回ほとんど手を加えていません。建物の状態が比較的良好だったこと、そして水回りの配管移動は工事費を大きく押し上げること、この2つが理由です。リノベーションでは、変えない判断も設計のうちだと思っています。限られた予算を、内部空間・断熱・耐震・暮らしの質に集中させるには、何を触らないかを先に決める必要があります。
変えたのは、内部の壁構成です。必要な壁を加え、不要な壁を取り除く。その最小限の操作で、光の届き方と空間のつながりを組み換えました。
光と暗さを設計する
LDKは、細かく区切られていた壁を整理し、南側の光が奥まで届く構成へ変えました。広くした、というより、光の経路を整えた、という方が近い。
ただし、すべてを均一に明るくしたわけではありません。明るい場所、少し暗めで落ち着く場所、開放的な場所、静かに籠れる場所。それぞれが違う居心地を持つように構成しました。一日の中で気分や用途に応じて居場所を選べる家は、広さだけでは測れない豊かさがあります。
続き間だった客間は、適度に区切り個の居場所へ変えました。既存和室のテイストを残しながら、懐かしさと落ち着きを持つ空間として再構成しています。
生活のノイズを減らすための収納
既存の建物は、もともと収納が少ない間取りでした。そこで、パントリー・納戸・玄関収納を可能な限り設けています。
物の定位置が決まると、空間は自然と落ち着きます。収納は物を隠すだけのものではなく、日常の動線から余分な手間を取り除く装置だと考えています。
性能について
断熱は全面的に改修しました。壁・床・天井には新たに断熱材を施工しています。改修前は断熱材がほとんど入っていない状態で、推計Ua値は約2.52W/㎡Kでした。今回の断熱改修(壁・床・天井)により、現時点でUa値0.82W/㎡Kまで改善しています。窓の断熱改修は次年度の省エネ補助金を活用して実施予定で、完了後はさらに性能が向上する見込みです。
数値は結果として大切ですが、朝起きたときの室温の安定感、暖房が効くまでの時間。暮らしの中で体が先に感じる変化があります。
耐震は、耐震診断の結果をもとに補強計画を立てました。南側の開口部という構造的な弱点を補いながら、採光はできる限り残す方針で設計しています。明るさを保ちながら、強くする。それが今回の耐震設計の課題でした。
リノベーションの目的
新築のように作り直すことが、リノベーションの目的ではありません。
既存の建物を丁寧に読んで、残す部分と更新する部分を整理し、最小限の操作で暮らしを更新していく。その積み重ねの先に、今の生活にちょうど合った住まいができあがります。
建物解説動画をアップしました。ぜひご覧ください。
上が建物全体解説編約15分、下が詳細解説編約12分の動画です。