【第2回】家づくりってどのように進めていくんですか?

前回相談に訪れた松永さんご夫妻。設計事務所についての説明を受けて、自分たちの選択が間違っていなかったと自信を持てたようです。引き続き、今回は家づくりの全体像についてお話をしていきます。
目次
金子: 事務所の特徴についてはなんとなくお分かりいただけたでしょうか?
祐樹(夫): はい、とてもわかりやすい内容でした。
金子: ありがとうございます。それでは次に、家づくりのおおまかな流れについてご説明していきます。
家づくりの流れ
金子: 当事務所に家の建築を依頼いただく場合、大きく4つに分けて、①設計提案、②詳細設計、③建築工事、④完成・引き渡しという順に進んでいきます。と言われてもよくわからないと思いますので、ひとつずつ見ていきましょう。
①設計提案
金子: まずはじめに設計提案を行っていきます。住まいの設計を金子に正式にお願いしたい、と決めるまでの検討期間とお考えください。今日は事務所までお越しいただいていますが、今回は事前相談になりますので、設計提案のうちに含まれます。
一番始めの事前相談では、家づくりについてのヒアリングや何気ない会話の中からその時の要望や予算などの条件を洗い出して整理していきます。すでに土地が決まっていたり、検討している土地がある場合には実際に現地へ趣き状況を確認しながら、要望が実現できる土地かどうかをアドバイスします。
また、これまでに建てた建物を見てみたいということでしたら、私の事務所にお越しいただく以外にも見学できる場合があります。住宅の場合はお住まいになっている方の同意を頂ければ、当事務所の担当者が同伴しながらの見学が可能ですし、店舗であれば場所や営業日をご案内しますので、実際にお店をご利用いただきながら営業に支障が無い範囲で見学が可能です。
瑠璃子(妻): お店だったら気軽に見に行けますね。
金子: そうなんですよ。カフェなどで内装を中心に見学できます。
そうして、お互いに擦り合わせを行いながら私のほうで数週間かけて情報を整理し、今後の基準となるプラン*をご提案いたします。ここでの提案を元に、以後の設計を進めていくイメージですね。
(*プラン・・・住宅設計の概要計画のこと。一般的に間取りを図した平面的な図面を指す。)
この提案では、建物の全体的なサイズ感や間取りなどを記載した設計図面を一緒に確認しながら、建物へのイメージを膨らませていただきます。その上で、改めて要望やご意見を伺い、後日何度かプランを修正しさらに洗練していきます。ここでの設計は詳細部分まで決める設計というより、建物の形や間取りなどの全体像を決める大枠の設計とお考えください。
ここまでの設計提案に納得いただければ、この段階で正式に金子に設計を依頼する(当事務所と設計契約を行う)かご回答いただく、という流れになります。
正式に設計を依頼いただける場合、ここから本格的に設計がスタートし、より詳細な設計に着手していきます。もし仮に提案にご納得いただけず契約に至らない場合は、恐れ入りますが設計提案の費用として10万円を頂戴していますので、その点ご了承ください。
祐樹: この時点で断ることもできるんですね。
金子: そのときは残念ではありますが、選択は依頼者さんの自由ですので。
②詳細設計
金子: 次にここから先は設計提案のプランを元に、さらに依頼者さんと打ち合わせを重ねて、要望やライフスタイルを細かく図面に反映していきます。耐震性や積雪荷重に耐えるための構造形式や断熱性能の計算、床や壁などの仕上げ材、水周りや照明など住宅に必要な設備の選定も合わせて進めていきます。ここでは決めることが膨大にあるので、図面は合計70枚を超えます。
祐樹: え、70枚ですか…!?
金子: 設計では図面が施工業者とのコミュニケーションの手段になるので、どのプロジェクトもそのくらい必要になってしまいますね。
祐樹: そうなんですか、想像を遥かに超えていました…。
金子: そして順調に設計が進み、建築工事に必要な設計図一式が出来上がるころには、いよいよ建築工事の準備に入ります。設計段階では、最終的な建築費までは分かりませんので、工事の施工業者(工務店)へ図面を渡し、工事金額を把握するために見積もりを依頼します。前回も少しご説明しましたが、特にご指定がなければ私のほうで信頼できる地元の工務店を選定します。もちろん、依頼者さんからご紹介いただくことも可能です。
そうして依頼した工務店から上がってきた見積書から、見積項目や工事単価などのチェックを行い、見積金額が妥当であるかどうかを専門家として査定します。依頼者さんとも見積金額を確認・相談の上で、施工業者を決定します。
この際、見積金額が予算をオーバーしていた場合は、設計仕様の変更を行って減額するなど、金額調整を行います。
工事費が決まり設計仕様が確定した時点で、関係官庁へ確認申請書類や許可申請書類を提出します。無事に申請許可が下りれば、工事着工へと続いていきます。
また住宅ローンを利用する場合、審査に数週間の時間がかかりますのでこの頃には速やかに申込手続きをして審査を通しておきたいところです。
祐樹: 住宅ローンは利用したいので、すみませんが後ほど質問させてください。
金子: はい、もちろんです。
③建築工事
金子: ここまで来れば、依頼者さんと見積を依頼していた施工業者とで工事請負契約を結んでいただき、晴れて工事着工です。地盤改良工事から始まり、基礎工事、建て方工事、外装〜内装仕上げ工事という流れで進んでいきます。
私のほうでは前回ご説明した設計監理を並行して行い、設計図面通りに工事が行われているかを確認します。このとき、図面だけでは伝わりづらい仕様なども現場へ指示しながら、完成までサポートします。また、依頼者さんにも現場打ち合わせに立ち会っていただいて、仕上げ材の色目や質感などを最終決定していただくこともあります。
祐樹: 工事中は何度か足を運んだ方が良いんですか?
金子: はい、ぜひ何度も足を運んでください。現場で確認しながら決めることも結構ありますし、大工さんと顔を合わせればお互いに安心できますしね。頑張ってくれている大工さんに差し入れするのもおすすめです。
祐樹: すごく気が早いと思いますけど、なんだか楽しそうですね。
金子: その時にしかない、建築現場のライブ感を味わえますよ。
そうこうしているうちに建築工事が無事完了すれば、関係官庁の完了検査を受けます。建物が建築法規に適合していることを確認してもらうんですね。合わせて、設計図面通りの建物が完成しているかどうかの現場検査や、不具合箇所があれば是正の指示、各設備関連機器の最終チェックを行い工事工程が完了となります。
最後に建物の所有者が依頼者さんであることを法務局へ届け出るため、建物の表題登記、所有権保存登記を司法書士さんに依頼し手続きを行ってもらいます。
④完成、引き渡し
引き渡し書類を確認した上で、依頼者さんに鍵の引き渡しを行います。これで、晴れて建物の完成、実際に住み始めることができる、というわけです。
家づくりにかかる期間
祐樹: いろいろありすぎて一度では覚えきれないですね…。
瑠璃子: 私細かいこと苦手だから、難しいところは夫に任せちゃった方が良いかもしれないなぁ。
祐樹: ちなみになんですけど、相談から建物の完成まではだいたいどのくらいの期間がかかるものですか?
金子: 相談から完成まででしたら、目安としておおよそ1年はかかります。図面を用意する設計期間が5ヶ月、工事見積りの調整期間として1ヶ月。そして仮に木造2階建てであれば工事期間が6ヶ月、というのが大体の内訳です。場合によってはそれ以上かかるケースもありますね。私の設計では時間をかけるスタンスですので、とにかく急ぎたいという方の場合はご希望に添えないこともあります。
一度完成すれば長く住む家だからこそ、依頼者さんも急がず腰を据えてじっくり考えていただくことが重要です。自分らしい家を作るためには1年はかかると思っていただければ、必ず納得行く家づくりができます。それに、理想の暮らしを実現するための自分の家について考える時間はワクワクすること間違いありません。その時間も含めて家づくりを楽しんでいただきたいんですよね。
祐樹: たしかにそうですよね。もし急いで建てられたとしても、不備が無いかな?大丈夫かな?という気もしますし、何しろ高い買い物なので慎重に進めたいです。そう考えれば、1年の期間は決して長くない気がしてきました。
設計提案に納得できないときは
金子: それとじっくり考えるという点では、私と松永さんがお互いに考えていることや感じたこと、疑問に思うことはなるべくお話ししていただくことも大事だと考えています。なぜかというと、よくわからないまま進めてしまうと、必ずと言っていいほど納得できない部分が出てきてしまいますので。もちろん話せる範囲で構いませんので、できる限り意見交換を行いましょう。わからないことはすぐに聞いていただいて構いません。
ただし先ほどもお話ししたように、始めの設計提案においてどうしても納得できない場合は、そこまでで断っていただくことも可能です。こればっかりは最初に思っていた感じと違ったり、相性の問題もありますので、もしそうなったとしてもあまり悪いことだとは思わないでください。
やり取りはメールやビデオ通話も対応可能
祐樹: わかりました。家を建てるという人生の一大プロジェクト、夫婦で考えて決めなければいけないとプレッシャーを感じていたのですが、そう言ってもらえてとても気が楽になりました。
であれば、ちょっとした質問などはメールでも対応してもらえますか?
金子: もちろんメールでも大丈夫ですよ。お会いしてご説明しなければいけないような難しい話でなければメールで回答いたします。またこれから設計を進めるにあたって何度かお会いして打ち合わせをすることになりますが、打ち合わせまでにちょっとした相談を直接お話しされたい場合は、Zoomを始めとしたビデオ通話システムでのオンラインミーティングも可能です。数年前の新型コロナウイルスの蔓延中は、ビデオ通話を使って打ち合わせも行っていたくらいです。いつでも気軽にご相談ください。
祐樹: ありがとうございます。スマホからもメールを確認できるのでとても助かります。あ、それでですね、今日一番聞きたかったことがあるのですけど…。
この記事のまとめ
- 家づくりの大まかな流れは、①設計提案、②詳細設計、③建築工事、④完成・引き渡しという順に進行する。
- 家づくりにかかる期間はおおよそ1年が目安。
- 普段のやり取りはメールやビデオ通話でも可能。
(連載3回目に続きます)