新潟市中央区 関屋の中古住宅 1階に絞った耐震・断熱リノベーション(工事進行中)

家の大きさではなく、暮らしの大きさから考える

最初に感じた可能性

最初の相談は、新築の計画でした。土地を買って建てるか、中古住宅を買って手を入れるか。購入費と工事費を合わせた全体費用を比べるうちに、中古住宅を探してリノベーションする方向へと進みました。いくつかの中古物件を一緒に見て、たどり着いたのがこの家です。

物件情報を見た段階では、やや不安を感じていました。昭和48年築、旧耐震の建物です。耐震性は低く、劣化も進んでいるだろう。そう考えていたからです。

印象が変わったのは、内見の日でした。床下をのぞくと、乾いている。土台に傷みは見当たりません。天井に雨漏りの跡もない。柱に水平器を当てると、まっすぐ垂直に立っていました。

古い家でも、骨組みが健全なら、住み継ぐことができる。そう確信できた日でした。

では、骨組みの状態は何で決まるのでしょうか。築年数だけではありません。手入れをしながら住まわれてきたか。建てた当時の材料と加工の技術が確かだったか。そして、その土地の地盤や湿気。中古住宅を見るときは、こうしたところにも目を向ける必要があります。

何が課題だったか

古い家は、冬が寒い。そう聞いたことのある方も多いと思います。この家も例外ではありませんでした。

昭和48年に建てられた木造2階建てで、最初の省エネ基準ができるより前の建物です。床下と天井に断熱材はなく、壁に入っていたのは厚さ20ミリのグラスウールだけ。それも壁の中を流れる空気で汚れ、ところどころ剥がれていました。夏は暑く、冬は寒い。心地よく暮らせる家とは言えない状態でした。

地震への備えも、十分ではありません。耐震診断の結果は、1階の評点が0.24/0.30。大きな地震で「倒壊する可能性が高い」とされる数字です。壁を開けてみると、過去の改修で筋交いが撤去されていたようでした。安心して暮らせる家とは言えない状態でした。

そして、間取りです。8DKの部屋は細かく分かれ、キッチンは廊下の向こう側。リビング・ダイニングとは離れていました。床も部屋ごとに高さが違い、小さな段差がいくつもあります。今の暮らしには合っていませんでした。

何を変え、何を変えなかったか

延床は150㎡(約45坪)を超えます。これだけの広さがあれば、今の暮らしは1階だけで足ります。そこで工事の範囲を1階に絞る判断をしました。2階は、将来、部屋が必要になったときのために残しています。

壁を開けて、分かったことがあります。床下の冷たい空気が、壁の中を通って天井裏へ抜けていたのです。古い家が寒い理由の一つが、ここにあります。外壁だけでなく、間仕切り壁も含めた1階のすべての壁に、気流止めを入れました。そのうえで、壁には105ミリ、天井には155ミリの高性能グラスウール。窓も断熱性の高いサッシに替え、キッチンには内窓を加えています。

耐震の補強は、筋交いを足すことが中心です。残せる筋交いには金物を足して生かし、足りない所には新しく入れました。2階の床裏には火打梁。窓の一部は塞いで、耐力壁に変えています。壁を増やせるうえ、窓から逃げる熱も減らせる。一つの工事で、二つの効果があります。

間仕切り壁は、できる限り取り払いました。廊下の向こうにあったキッチンもつなげ、LDKはひと続きに。ただ、柱は動かしていません。柱を動かすと梁の補強が要り、工事費がかさむからです。残せば、2階の重さを支える流れもそのまま。家具の配置は、柱の位置から考えました。床は既存の床の上に断熱材を重ね、段差のない一枚の床にしています。

水回りの位置は、大きく変えていません。配管が長くなれば、そのぶん工事費が上がるからです。

キッチンを主役にしない

キッチンを家の中心に置くかどうか。決めるのは、間取りの定石ではなく、そこに住む人の暮らし方です。この家では、打合せを重ねるなかで、キッチンを主役にしないと決めました。キッチンは北側へ。南側のダイニングを、暮らしの真ん中に据えています。

キッチンはオープンのI型オーダーキッチン。ステンレスの天板に、造作の家具を組み合わせています。天井はダイニングと同じ仕上げにして、空間の中になじませました。主役ではなく、食事の時間を支える場所。それがこの家のキッチンです。

この家で目指したのは、大きな開口がありながら、落ち着きもある空間です。開放感と落ち着きは、ときに反対を向きます。この二つをどう両立させるかが、この家の設計の要でした。

まず、広がりをつくります。縁側も部屋の中に取り込み、天井と床の高さを一定にそろえました。仕上げも、リビング・ダイニング・キッチンで変えていません。床はマホガニー、天井は桐の合板。境目がないぶん、ひと続きの空間であることが際立ちます。

南側の開口は、耐震補強のために一部を塞ぎましたが、残した部分のサッシは新しく交換しました。もとのサッシは途中に横桟が入り、上には欄間がある形で、外とのつながりを感じにくいものでした。新しいサッシは断熱の性能を上げ、枠も目立たないよう納めています。視線が、外へ、横へと抜けていきます。

そして、落ち着きをつくっているのが天井です。天井は白いクロスなど、明るい仕上げにすることが多いもの。ここではあえて、桐の合板を張りました。木の天井は白い天井より色に重みがあり、空間の重心を低く保ちます。桐は張ったばかりのころは白っぽく、年月とともに茶色みを帯びていきます。住むほどに、落ち着きが増していく天井です。

性能について

最後に、数字で見てみます。

断熱の性能を表すUa値は、1階で約3.28W/㎡K(推計)から0.59W/㎡Kへ。5地域の断熱等級5の基準(0.60以下)を満たす水準です。

耐震は一般診断法で評価しました。1階の上部構造評点は、補強前の0.24/0.30から1.08へ。2階も補強し、建物全体で評点1.0を上回っています。

リノベーションの目的

私の設計の出発点は、一般論ではなく、その人にとってより良い暮らしとは何かを考えることです。そのうえで、断熱・耐震・気密は、目に見えない基本の性能だと考えています。どんなに心地よい空間をつくっても、冬に寒く、地震に弱い家では、安心して暮らせません。だから工事の範囲を1階に絞り、その1階は、今の基準を満たす性能まで引き上げました。

規模と構造

用途 住宅
住所 新潟市中央区 関屋
敷地面積 226.77㎡(68.60坪)
建築面積 104.33㎡(31.54坪)
延床面積 153.93㎡(46.56坪)
構造 木造2階建て
竣工 2027年1月竣工(予定)
建築費 2,256万円(消費税別)
坪単価 71.4万/坪(耐震・断熱内装リノベーション工事費)
設計料 194万円(消費税別)

性能

耐震診断(一般診断法)上部構造評点(1階):補強前 X0.24/Y0.30 → 補強後 X1.08/Y1.08。2階も補強し、X1.29/Y1.04
断熱性能(外皮平均熱貫流率Ua、1階):改修前 約3.28 → 改修後 0.59W/㎡K

仕上げ材

天井:桐合板貼
壁:自然塗料塗り、ビニルクロス張り
床:マホガニー無垢フローリング+自然オイル塗布、ラワン合板、塩ビタイル

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